茗溪学園保護者会

個人課題研究優秀者発表会を参観して

― 研究に向き合う姿勢と、発表を通じた学び ―

 

茗溪学園の個人課題研究優秀者発表会を参観した。今回発表したのは、約280名の中から選ばれた40名の生徒たちである。選考にあたっては、全員が発表した時の様子や内容、1年間指導してきた課題指導者の評価、さらに学年の教員団による論文評価など、複数の観点から総合的に判断されたという。中には、広島大学高校生プレゼンテーション大会などで優秀賞や最優秀賞を受賞した生徒もおり、学校外でも高く評価されていることに驚かされた。当日は分野ごとに10の分科会に分かれ、それぞれに筑波大学の先生が座長として来てくださっていた。

茗溪学園の個人課題研究の特徴として、理科系の研究だけでなく、文系の研究も多く含まれている点が挙げられる。他校の研究発表では理系研究が中心になりがちな中で、茗溪学園では半数近くが文系のテーマに取り組んでいるという。生徒たちは、中学 1 年生の頃から探究、英語、歴史などの授業を通じて発表の経験を積んでおり、その積み重ねが今回の堂々とした発表につながっているように感じられた。

発表では、立ち見が出るほど多くの生徒が集まる分科会もあり、発表者たちはポインターや身振り手振りを使いながら、聞き手に向かって堂々と説明していた。質疑応答でも、自分の言葉で丁寧に答えており、研究を深めてきたことがよく伝わってきた。分科会ごとに雰囲気や発表スタイルも異なり、笑いが起こる和やかな発表もあれば、非常に専門的で高校生とは思えない内容の発表もあり、それぞれに特徴があって興味深かった。

特に印象的だったのは、高校生らしい工夫を凝らした実験研究である。高額な装置ではなく、身近な材料を利用しながら試行錯誤を重ねていた。例えば、複葉と単葉の進化について調べた研究では、ストローや割りばしを使って葉の模型を作り、風や水による変化を調べていた。また、サカマキガイとプラスチック汚染の関係を調べた研究では、均一な濃度のプラスチックの混ざった水を作る難しさに苦労しながらも、条件を変えた実験のデータを何度も取ろうとしていた。PVAを混ぜるため洗濯のりを使用した際に大量の泡が発生し、その泡に乗って貝が逃げてしまったというエピソードも紹介され、実験の大変さと、高校生らしい奮闘が伝わってきた。また、グリシンの細菌のストレス耐性に及ぼす影響を調べた研究では、自ら撮影した菌の写真に、わかりやすい説明を加えたスライドなどもあり、研究のレベルの高さに驚かされた。

ミカンと青カビの生存競争について調べた研究では、研究を行った感想として、「青カビの培地作成やHPLCの測定準備には予想をはるかに上回る時間が必要であった。実験には予期せぬトラブルがつきものであり、そのたびに原因を考えて一つ一つ解決していく難しさを実感した。ミカンは身近な食材で1年を通して入手出来る検体ではあったが、鮮度を考えると箱買い出来なかったり、産地に関係があるか考えた時にはスーパーや直売所を何件も探し回ったりした。今回の経験を通じて、研究を円滑に進めるためには、常に先を見越して動き、余裕を持った計画を立てることがいかに大切であるかを学んだ。今後は、この実験で得た時間管理や準備の重要性を教訓とし、より計画的に取り組んでいきたい。」と述べていた。

植物や動物を扱う研究では、思うように結果が出ないことも多く、データが取れなかったり、生物の飼育自体に苦労したりと、多くの困難があったようだ。ある分科会では、4 年生から多くの質問が出ていたが、実験でうまくいかなかった点も率直に共有されており、その経験自体が後輩たちにとって大きな学びになっていた。

発表者の中には、学校が終わるとすぐに大学へ向かい、夏休みや冬休みもほとんど欠かさず実験に取り組んできた生徒もいた。思うような結果が出ず、なかなか報われない時期もあったが、それでも諦めずに最後までやり切った経験は、知識や技術だけでなく、粘り強く努力する力を育てたように思われる。個人課題研究は、将来の目標につながる大きな成長の機会になっていた。

発表は場所を変え3回繰り返して行われた。1回目は座長から講評をいただくもの。2、3回目は後輩に研究への取り組み方などを伝える発表だ。座長は「高校生だから」という甘い評価ではなく、統計処理や図の見せ方、実験条件について本格的な視点から講評を行っていた。その厳しい指摘に対して、生徒たちは次の発表ですぐに改善を取り入れており、研究への真剣な姿勢と成長の早さに感心した。後輩からも鋭い質問が多く出ており、研究内容を深く理解しようとする姿勢が感じられた。

今回の発表では、統計処理を取り入れている生徒が多かったことも印象的だった。理系研究だけでなく、文系研究でも統計的な分析を用いている生徒がおり、研究のレベルの高さが感じられた。統計については外部講師による講座もあったが、多くの生徒は課題指導者に勧められた本を読んだり、独学で学んだりしながら、自分の研究に必要な方法を身につけていたという。

さらに、研究テーマには家庭環境や保護者の影響も大きいと感じた。絶滅危惧種の研究や 馬糞堆肥の研究など、身近な環境や家族の仕事・経験がテーマにつながっている例も多く、日常の中から探究が生まれていることが分かった。

今回の発表会を通じて感じたのは、個人課題研究が単に「成果を発表する場」ではないということである。問いを立てること、方法を考えること、失敗を受け止めて修正すること、データを読み解くこと、他者に伝えること、質問に答えること。そのすべてが、生徒たちにとって大きな学びになっていた。

研究内容そのものの面白さに加えて、発表の仕方、質疑応答への向き合い方、そして 1 年間粘り強く取り組んできた過程が強く印象に残る発表会だった。生徒たちの姿から、個人課題研究が知識の習得にとどまらず、自分で考え、試行錯誤し、社会とのつながりを意識する力を育てる貴重な学びの場であることを改めて感じた。